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タイトル画


その時、時刻は夜の11時を回ったところだった。
ぺえたは静かに階段を下りていった。

ぺえたが向かった先は台所だった。
そろそろ眠りに就こうかと考えていたのだが、その前にどうしてもやるべきことがあったのだ。
それは腹ごしらえだった。

ぺえたは腹が減っていたのだ。
夜遅くに食べるのは体に良くないことは、良く解っていた。
しかし、このまま空腹を抱えて眠りに就くことなど、ぺえたにはできる筈もないことだった。

台所の戸を開けると、ドタドタッと物音がした。

ぺえたはその物音の正体が何なのか、すぐに察した。
「それ」の姿を確認しようと、ぺえたはキョロキョロと台所を見回した。
「それ」がどこに潜んでいるのか把握しておかなければ、安心して食事をすることなどできないのだ。
場合によっては食事をあきらめて退散するしかないかもしれない。

どこにいるのだろう――――。



しっぽ?

いた。

「それ」の正体とは、そう、ネズミだ。

去年の秋ごろから、ぺえたの家では頻繁にネズミが出没していた。
寒くなって食べ物が少なくなったのだろう。
ネズミは夜な夜なぺえたの家に入り込んでは、勝手に天井裏で運動会を開催し、台所で食べ物を物色していたのだ。

ガスコンロの後ろにネズミが隠れていると気づいたぺえたは、このまま立ち去るべきか否か迷っていた。
普通の女性なら、こんなときは悲鳴を上げて、すぐさま立ち去っていることだろう。

しかし、ぺえたは違った。
悲鳴を上げたところで、助けに来る人などいやしないのだ。

ぺえたは恐る恐る手を伸ばし、火をつけてみた。
火に驚いて、ネズミが何処かへ逃げてくれる事を期待したのだ。

しかし、ネズミが飛び出してくることはなかった。
飛び出して来たら来たで、怖いのだが。

どうやらネズミは、ガスコンロの下に潜ってしまったようだった。
ぺえたはさらに悩んだ。
なぜなら、ぺえたが食べようとしていたのは、オートミールだったからだ。
賞味期限ギリギリの牛乳が冷蔵庫に入っているのだ。
もういい加減に使い切ってしまわなければ、捨てるしかなくなってしまう。

火を使わなければ、オートミールを食べることができない。
だが、そこにはネズミが潜んでいる。

空腹のまま、部屋に戻るのは気が引けた。
部屋に戻ったところで、何も食べるものはないのだ。
このままでは眠ることはできない。どうするか―――。

ぺえたは冷蔵庫のドアを開け、牛乳を取り出した。
そして鍋を取り、火にかけた。

ぺえたはオートミールを作ることを選んだ。
結局、空腹に負けてしまったのだ。
ネズミの恐怖より、食欲のほうが勝っていたのだ。

なんという女なのだろう―――。

鍋はすぐにグツグツと音を立て始めた。
ネズミは潜ったまま姿を見せない。

熱くはないのだろうか?
ぺえたは不思議に思った。
それともすでに、何処かへ逃げて行ってしまったのだろうか。

まだ完全に火が通っていなかったが、ぺえたは火を止め鍋を掴むと、一目散に二階へ駆け上がった。
後は余熱で蒸らせばいい。
もうこれ以上、ネズミのいる台所には一秒たりともいたくなかったのだ。



―――翌朝、ぺえたが台所に行くと、いつも通りの朝が始まっていた。
昨夜ネズミがいた形跡さえない。

だが、ヤツはまたやってくるだろう。
今夜も天井裏から聞こえてくるだろう。
ヤツの足音が。
ぺえたは重い表情で俯いた。

俯いたぺえたの目に、空っぽのネズミ捕りが虚しく映った。



あ、千代子が登場してないや


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ちなみに、過去の「小説風 千代子抄」はこちらです→ その① その②
よかったら読んでみてください♪
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