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*今日は文字ばかりです


暗闇の中、ぺえたはその泣き声で目が覚めた。
深い闇の中からかすかに聞こえてくる、悲しげな泣き声。
まるで赤子が母を求めるような、悲しい、切ない声。

千代子だ。

千代子

千代子が泣いているのだ。
「またか・・・」
ぺえたはうんざりしたように呟いた。
こんなふうに千代子が泣くのはウン○をしたいときだ。
千代子は(小)はトイレシーツにするが、(大)は外でしかしないのだ。
だがウン○は昼間に出しているし、とても色艶のいいウン○だった。
腹を下しているとは考えにくい。

なぜ泣くのだろう。寂しいのだろうか。
考えている間にも、その泣き声はどんどん大きくなっていく。
ぺえたはため息をつきながら、上着をはおり、ドアを開けた。
そっと階段を降りていくと、ぺえたに気づいた千代子が、待ちかねたようにキュオォォォンと泣いた。
「しーっ、静かに」
ぺえたが声をかけると、千代子は興奮してぺえたの足に飛びついてきた。
「千代子・・・・なぜ泣くんだ? 腹が痛いのか? それともシッコか?」
ぺえたは千代子に尋ねたが、千代子は泣き喚きながら、激しくぺえたにじゃれついてくるだけだった。
その必死な姿は、まるで何かを訴えかけているかのようだ。

ぺえたはカーテンを少し捲って窓の外を見やった。
寒そうだ。
時計の針を見ると午前4時半を回ったところだった。
ますます寒そうだ。
だが興奮する千代子を大人しくさせるには、外に連れ出す以外方法はない。
千代子はもうリードを咥えて振り回していた。
興奮がピークに達しているようだ。
「仕方ないな・・・・」
ぺえたはそう呟くと、玄関の鍵を開け始めた。
途端に千代子の目が輝きだす。


早く、早く開けて。外に出たいの。


ぺえたは千代子が咥えていたリードを手に取った。
そして静かに引き戸を開ける。
冷たい夜風がぺえたの顔に吹き付けてきた。
千代子はぺえたの足元をすり抜けて、一目散に外へ飛び出した。
嬉しそうに庭を飛び跳ねる。
無邪気にはしゃぐその姿に、ぺえたは思わず寒さも忘れ目を細めた。

ぺえたは千代子を連れて、近くの空き地へ向かった。
夜明け前、まだ真っ暗な歩道を歩く一人と一匹。
他に歩いている人など誰一人いない。
いるはずもない。いたら逆に怖い。

千代子は突然走り出した。
そしていきなり立ち止まり、歩道の脇の草むらに顔をつっこんでにおいを嗅ぐ。
走っては止まり、また走っては止まる。
そんな千代子に振り回され、ぺえたは転ばないように気をつけながら暗い歩道を歩いていた。

空き地へ向かう道すがら、2台の車がぺえた達を追い越していった。
ぺえたは思った。
あの車に乗っていた人は、こんな時間に犬の散歩をしている私を、きっと怪しい人だと思っただろうな。
ぺえたは自嘲気味に唇を歪めた。

程なくして目的の空き地についた。
「さあ、千代子。ウン○をしなさい。」
ぺえたは急かすように千代子に言った。
だが千代子は、においを嗅ぎまわっては、あちこちにシッコをかけるだけ。
ウン○を出す気配はまるでない。
やはりゲ○Pではなかったようだ。

また騙された・・・・・。
ぺえたがそう思うのも無理はなかった。
もう3日も続けて深夜の散歩をしているのだから。
ぺえたの心にドス黒い感情が芽生えたが、黙って呑み込むしかなかった。

一通り空き地を歩き回った千代子は、そのまま散歩コースの土手へ向かおうとした。
「待ってくれ、千代子。土手に行くのは無理だ。」
千代子は不満そうな顔をしたが、今、土手は真っ暗闇だ。街灯すらない。
土手に行くのは到底無理なことだった。
諦め切れない千代子は、じっと土手を見つめている。

ぺえたも土手を見つめた。
真っ暗だ。月明かりさえない。
まだ夜は明けないのだろうか。
そう思いながら、ぺえたは空を見上げた。
すると、雲ひとつない夜空に、数え切れないほどの星々が煌いていた。
まさに満天の星空だ。

星空

「千代子・・・星がきれいだ」
ぺえたは千代子に声をかけた。
だが、千代子はきれいさっぱり無視した。
千代子にとっては星など、どうでもいいことなのだ。犬だから。
もっと歩きたい。
今の千代子の頭の中には、それしかなかった。

星に見入っていたぺえたの体が、不意に揺れた。
千代子がリードを引っ張ったのだ。
土手へ向かって歩き出そうとしている。
冗談じゃない。ぺえたはそう思った。
そして、さり気なく家へ向かって歩き出した。
もう散歩の時間は終わりだ。

早朝の散歩を終えて家に辿り着くと、時計の針は午前5時を回るところだった。
千代子は静かに廊下に座った。
まだ息が弾んでいるが、その表情は穏やかで、幸福感に満ちていた。
どうやら散歩に満足してくれたようだ。
これでもう、泣かれることはないだろう。
ぺえたは千代子の頭を撫でながらこう言った。
「もう騒ぐんじゃねえぞ。おとなしく寝ろよ。」
千代子は無言で自分の寝床に横たわった。

これで安心して眠れる。
ぺえたはゆっくりと階段を上がって行った。
部屋へ入ると上着を無造作に脱ぎ捨て、ベッドへ滑り込む。
暖かい。
ああ、やっと眠れる。
安堵感からか、一気に睡魔が押し寄せてくる。
ぺえたはふうっと一息つくと、そのまま眠りに落ちて行った。



数時間後、ぺえたが目覚めると、外はすっかり明るくなっていた。
時計の針を見ると、もう昼の12時を回っていた。
寝過ごすにも程がある。
あまりのショックに、ぺえたはそのまま気を失い、再び眠りに落ちて行くのだった。


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長くてすいません手書き風シリーズ汗1
最後まで読んでいただいて、ありがとうございますm(__)m
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